今日の営業も無事に終わり売り上げ金をまとめていた浦は、ガシャンという今ではもうすっかり聞き慣れてしまった陶器の割れる音に手元の電卓からカウンターへと意識を移す。
やっぱりというかそこには粉々に砕け散ったカップの残骸と、さも“転びました”と言わんばかりの良太郎の姿。

「……良太郎、大丈夫?怪我は?」
「浦……。ごめん、ちょっとつまづいちゃって」

「怪我は無いよ」といつもの笑みを浮かべる良太郎に今日は比較的被害が少なくて良かったと安堵する。
何せ彼ときたら不運の女神と赤い糸で結ばれているのではと疑いたくなるほど運が無く転んでカップを割ることなど日常茶飯事、その破片で怪我をすることも少なくはないのだ。

「あぁ、片付けは僕がやるから良太郎はお金よろしくね?」
「ごめん……ありがとう」
「いーぇ?」

くすくすと笑ながら少し奥まった場所にある用具入れへと向かい箒と塵取りを手にする。
折角怪我をせずに済んだのだから、これ以上危険物の近くには置いておきたくない。それに。

(僕がやったほうが時間かからないしね)

元から掃除は好きな方であったが、この店には良太郎の他にもう一人。力加減の下手な料理人――名を金というのだが、彼もまた物をよく壊す。必然的に割れ物の扱いは上手くなっていた。
手早く破片を集め不燃物入れへ流し込むと騒ぎを聞き付けたのか奥から「大丈夫ですかー?」との声。返事を返す良太郎も片付けを終えたようだ。

「……さて、片付けも終わったしみんなも待ってるだろうから僕らも戻ろうか?」
「そうだね」

振り返り、微笑混じりに問えば良太郎も笑いを返し、それにまた笑みを深くして奥へと続く扉を押す。途端に多方面からかけられる声に二人で応じる。

こうして皆に囲まれて、他愛も無い話をすることにどうしようもない程の幸福を感じるようになったのはいつからだろうか?
だから、そう、いつまでも。


いつまでも、この温かく柔らかな時間が続くように。


―――

色々やっちまった感満載なカフェパロです。一応、
浦=フロア
良太郎=オーナー代理兼フロア
桃=デザート
金=軽食
龍=バイト
ナオミ=ドリンク
という設定があるのですがあまり活かせず……
というか設定だけが膨らんでってますorz




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